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執筆者の写真流山ラグビークラブ

【ラグビーを読む】第8回 安藤祐介『不惑のスクラム』角川文庫(2018年)


 不運が重なり傷害致死という重い罪を背負い、すべてを失った男が、死に場所を求めていた時に、あるシニアラグビークラブに出会います。男はそこでさまざまな事情を抱える人々と触れ合いながら人生を見つめ直していく。本書はそんな物語です。


 この作品の面白いところは、主人公である丸川の視点で話が展開されるのではなく、各章で視点が入れ替わるところです。丸川が入った「大江戸ヤンチャーズ」というクラブのチームメートの眼を借りて、章ごとに違った視点から見た話が進んでいきます。


 チームメートにもそれぞれの事情があり、決して順調に歩んでいるわけではありません。丸川の秘密を知って受け入れる人も拒絶する人もいます。読者は複数の視点から丸川という人間について徐々に知っていくことになるのです。


 丸川がこのラグビークラブに入り、様々な人たちと絡むことでどう変化していくのか。そして丸川という人間を知ることでチームメートたちにどのような変化が表れるのか。ぶつかり合い、支え合い、球をつなぎ合うプレーのように、登場人物が響き合います。ラグビーというたった一つのつながりが皆の人生を大きく変えるということを、この作品は教えてくれます。


(江戸川大学マスコミ学科、大庭太輝)


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