ラグビー選手以外にも、ラグビー愛を語るアスリートがいる。2009年に米大リーグ、ヤンキースをチャンピオンに導いてワールドシリーズMVPに輝いた松井秀喜だ。
「僕にはラグビーの美しさが響いた。あれだけ激しいコンタクトがありながら、相手に対する敬意がプレーに表れる。ルールが悪用されないことを前提に成り立っているスポーツという印象を受けた」
本書は、2012年に引退した著者が2013年3月から2014年11月にかけて共同通信社に寄稿し、新聞各社に配信された長期連載コラムに加筆したものである。敗戦の受け止め方や、自信とは何かなど、一流野球選手の考えがつづられている。その中で「ラグビーの美しさ」と題した章が目を引く。
アメリカンフットボールが大人気の米国で暮らす著者が現在ラグビーを見る機会は少ないという。だが石川県の実家近くにラグビー場があったことや、テレビドラマ『スクール☆ウォーズ』の影響で少年時代からラグビーが大好き。社会人の神戸製鋼に夢中になり、中でも大西一平の力強いプレーにひかれた。プロ野球の巨人に入団後は、神戸製鋼の試合をはじめ、大学のゲームにも足を運んだと振り返っている。
身長188センチ、100キロを超える体重で「ゴジラ」の異名を取った松井秀喜がラグビーをプレーしたら…と考えてしまう。ただ本人は「自分が鮮やかにプレーしている姿がどうも想像できない」そうだ。「野球以上に向いているものがあったとは思えない」と言われると納得せざるを得ない。
冒頭に引用した「ラグビーの美しさ」になぜ心を捉えられるのか。著者は「僕が野球で大切にしたいと思うものと重なる部分があった」と説明している。ラグビーキッズにも、松井ファンの保護者の方々にも、ぜひ手に取っていただきたい。
(江戸川大学マスコミ学科、岩崎武瑠)
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